税率の上下と税収の上下の関係について

  • 2019.01.13
  • 2020.05.01
  • 社会
税率の上下と税収の上下の関係について

社会保障の費用が増えるので、日本はそのお金を集める必要があります。
普通に考えると税金で集める形になるでしょう。
お金を今より集めるために、国は税率を上げようとしてくるでしょうか?普通に考えれば税率を上げれば税収は増えるでしょう。
それとも逆に税率を下げようとしてくるでしょうか?「税率を下げると経済活動が活発になり、その結果逆に税収は増える」という話もよく聞きます。

という事で、日本の税率と税収の関係について調べてみました。
また、国は税率をどうしてくるであろうか、筆者の予想を書きます。

2025年に税収を20兆円増やす必要がある

次の通り、6年後の2025年は社会保障に今より20兆円多く必要だと国は算出しています。その後も増える一方だと国は算出しています。

2040年を見据えた社会保障の将来見通し(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 平成30年5月21日)

無からお金は生えてきませんので、国は2025年にはどこかから20兆円調達する必要があります。調達できなければ、老人に年金を渡せず、老人だけでなく日本人全体の病院代も上がります。

(医療費は通常は7割を国が出してくれており、我々は3割分だけ病院の窓口で払ってます。国は上の棒グラフの赤い部分「医療」の金額で国の負担分を払っています。実はこの「医療」の金額も、元々は私達が税金や社会保障費として国に治めたお金です。ですので国の負担といいつつも根本は日本人全体で負担しています。ちなみに3割の負担と書きましたが、個人の負担には色々特例があり3割以下で済む例もかなり多いです。)

日本の税は法人税、所得税、消費税の3つがほぼ占めている

以下の円グラフは国の(一般会計の)歳入の内訳です。いわゆる「国家予算」の収入、国に入ってくるお金全部をグラフにしたものです。
円の右側に「租税及び印紙収入 59兆円」と書いてあります。これがいわゆる日本の税収です。
(ついでに少々触れますと、左側に「公債金 33兆円」があります。これが国債、言わゆる「国の借金」です。この年は国の借金が33兆円増えました)

上のグラフの通り、税収のほとんどを次の3つの税が占めています。

  1. 法人税
  2. 所得税
  3. 消費税

計算すると税収の8割以上です。ですので、これら3つの税に絞って、主に日本政府発表のデータに基づき税率と税収の関係を考察してみます。
また、これらの税の税率を今後国が上げようとしてくるか、それとも下げようとしてくるか筆者の予想を記述します。

(・・・筆者が疲れたのでここから文体を「だ・である調」にします。。。)

法人税の税率と税収の関係

法人税では「収税力」という言葉が普通に使われる。平成26年の税収力は法人税の税率1%あたり3900億円(国のみ。地方含まず)
法人税を1%上げれば税収が0.39兆円上がり、1%下げれば0.39兆円下がる。

参考資料[法人税課税関連] (財務省 平成26年3月31日)

グラフをみると、法人税の税率は下がり続けている。法人税の税収も上下はあるものの傾向としては減少している。
よって法人税では税率と税収は正の相関。つまり税率を上げると税収は上がる。税率を下げると税収は下がる。

法人税は、税率を下げると税収が下がる

今後の法人税の税率予想

予想の材料として次がある。

・法人税が高いと企業が日本を忌避する。法人税の税率の分だけ企業は税金をとられて利益が減る。企業が資本を投下するとき、効率が高い国を選択するのは当然である。最近の事例としては、アメリカでトランプ減税(法人税35%→21%)により企業のアメリカ回帰が起きた(この記事では税収は不明)

・世界的に法人税を下げるのがトレンドである(下のリンク)
・日本の法人税の実効税率は世界と比較して高い(同様に下のリンク)

元データ171の国と地域のうち、2017年でいうと日本は25番目に税率が高い国であり、この点を鑑みると日本の法定実効税率は国際的にみても高いと結論付けて問題なさそうです。

ここまでの材料で判断すると、企業の日本離れを防ぐため日本も世界に追従して税率を下げ続けるしかないと思われる。

予想:法人税の税率は引き続き税率を下げ続ける

所得税の税率と税収の関係

おおよそ、所得税の税率は下がり続けている(近年は上昇傾向)

おおよそ、所得税の税収も下がり続けている(近年は上昇傾向)


ここまでの数字をみると、所得税の税率と税収は正の相関とみるのが妥当であろう。つまり所得税の税率を上げると所得税の税収は上がる、所得税の税率を上げると所得税の税収は下がる。

所得税は、税率を下げると税収が減少する

今後の所得税の税率予想

税率が高いと、特に超高所得層や収入を日本に依存しなくてよい人の場合(海外への投資家、オンラインで可能な仕事等)は税率の低い国に移住する。税の支払い額より移住のコストが低くなるためである。このため海外と比較して日本だけ特別に税率を高くすることはできない。また就職先に海外を選べる人の場合、就職時・転職時に税金も考慮に入る。
次のリンクは高額所得者へ海外移住の情報を提供している例である(この類のサイトは他にもある)

 

次のサンプルを見る限り、現在の日本の所得税(+住民税)の実効税率は国際比較で低い。日本より低いのはアメリカのみ。

注:下の折れ線グラフは次の点に注意が必要である。右端が3000万円と高い。このグラフのモデルケースは方働きであるが日本は共働きの方が多い。このグラフのモデルケースは4人家族だが日本は4人家族は少なく2,3人家族の方が多い。

ここまでの数字をまとめると次になる

  • 日本の所得税は世界と比較して税率が低い。特に低所得層、中所得層は低い。
  • 近年、日本の所得税は上昇傾向である

よって所得税は引き続き増税すると予想する。

予想:所得税は引き続き増税を続ける

消費税の税率と税収の関係

政府資料は以下。

税収に階段ができている。つまり消費税の増税に応じてきれいに税収が上がった。消費税の税率と税収は正の相関をしていると言って間違いない。
(また消費税は他の税と比較して税収の上下が低く税収として安定している。記事のこの後でこれに触れる)

消費税は税率を上げるときれいに税収が上がる

今後の消費税の税率予想

消費税について徴税側(国)の都合

財源として安定しているため、徴税側としてみると(他の税と比較して)消費税の割合が高い方が都合がよい。

消費税について納税側(国民)の都合
消費税は逆進性が高く所得が低いほど負担率が高い。所得税では低所得層・中所得層を増税するであろうと筆者は予測したが、加えてさらに消費税を増税すると貧富の差が拡大する。

個人的には累進課税にするべき強固な理由はないと考える。他の人からお金を払ってもらう=社会に貢献しているので、貢献した分の対価は得られるようにしないとそもそも資本主義が成り立たない。ただお金を稼ぐ能力には本人の能力だけでなく「運」も絡むため、ある程度の累進課税を行って高所得者から「税」という形で徴収し、運の悪かった人々に社会保障等やインフラの提供(道路の施設等)の形で還元するのは妥当であろう。
では妥当な累進課税の割合はどの程度かとなるが、筆者には全く分からない。
ただ、税率が諸外国と乖離しすぎると高税率を回避する層がでて回避した層の税が入らなくなる。これにより経済も縮小する。残った人々への還元も減る。また後述するが日本の経済縮小は税収の観点からも避ける必要がある。
このため、この記事では日本の税率と海外の税率を比較している。

 

これを見ると日本の直間比率は高い。高いという事は消費税を下げる圧力がある(ただ、サンプルが少ないので何とも言い難い)

 

ここまで書いたが、筆者は消費税の税率上下の材料を見つけられなかった。ただ所得税の増税でも税収が足らなければ、徴税側としては税率に応じてきれいに税収があがる消費税を上げる意欲は高いであろう。

予想:税収が足らなければ消費税の税率が上がる

税収の合計について

ここまで個々の税について調べてみたが、税率を上げれば税収も上がる、税率を下げれば税収も下がると分かった。普通の結果であった。
だが税収は全体的に経済活動によっても上下する。景気が良ければ税率が変わらなくても税収は上がる。景気が悪くなれば税率がそのままでも税収が下がる。
ここまでの資料をみても、税率の上下がなくても税収は上下している。
そこでここからこの記事は、日本の税収全体(上記の三つの税の合計)について記述する。

日経平均からの予想

税収の合計と日経平均は相関が高い。相関係数でみると0.84である。

 

相関係数の目安として、相関係数0.7~1.0でかなり強い正の相関がある

 

要するに「日経平均が上がった時には税収が上がってきた」「日経平均が下がった時には税収が下がってきた」。日経平均と日本の税収はかなり関連が強いという事である。
なので、ここから筆者の日経平均の予想を記述する。

 

材料1

過去20年、現在の覇権国であるアメリカでも株の上昇率は年5.5%

5.5%という事は、例えば次である。
7.5%の年が5年あったら、3.5%の年が5年ある。残りの10年は5.5%であった。

成長率が高かった年があった分、低かった年がでるのが株の世界の常識である。「平均への回帰」等と呼ばれる。


(この記事で引用されている「バンガード社」は資産運用額が世界で第2位の会社である。無責任な情報を顧客に流すとは考えづらく信用は高い)

アメリカは現在の覇権国である。今後人口の減少する日本の株がアメリカの株以上に成長するとは考えにくい。

材料2

アメリカの過去20年の成長率は5.5%であったが、日本の成長率はどうであったか確認する。

 

 

 

日経平均の伸びは足りないと思われる

 

税収の伸びを見ると、2009年から2018年までに日本の税収は20兆円増えている。

9年で20兆円の伸びである。2025年までに税収を20兆円増やすには、これより速いペースで日経平均が上がる必要がある

では日経平均の伸びを見てみる

kabutan(https://kabutan.jp/)より

2009年から2018年まで、日経平均は約年に+10%の伸びである。

 

<<以下記述中(2019/1/4) >>

 

個々の税率の上下と税収全体についてまとめ

要するに「景気をよくする」「株価を上げる」「GDPを上げる」と日本の全体の税収も上がる。それだけである。
消費税を上げようが下げようが、個別の税率の上下は大勢に大して影響がない。
各種税率をいじっても税収の中での割合が変わるだけであり、税収の合計にはあまり変わりがない。
例えば次である

  1. 消費税を上げると税収のうちの消費税の割合が上がる。
  2. つまり、消費税の割合が上がる分、法人税の割合は下がる。
  3. また、消費税の割合が上がる分、所得税の割合は下がる。

この前提に立つと、よく見かける「消費税を上げたら法人税の税収が下がった」「消費税を上げたら所得税の税収が下がった」との主張も辻褄が合う。
ただここまで見たように税率と税収は正の相関がある。全体的に税率を上げればさすがに税収も増えるであろう。もしくは、税収額は維持したまま経済が縮小すると思われる。

 

参考資料

人口予測(社会保障費等、各種予測に重要):他の予測に比べれば当たりやすいが、それでもズレる。今までは、おおむね予測より人口が減っている。

 

日本の歳入・歳出の推移

 

内閣府 税制調査会 会議資料

 

ラッファー曲線:「税率が上がれば税収は増えていくが,ある点を超えると,税率の上昇はかえって税収を減らすことになる」ということを示す曲線。減税の正当性を根拠づけるためによく用いられる

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